【プレスリリース】メタジェンセラピューティクス、国内初「献便施設」の開設を発表

~山形県鶴岡市から世界の患者さんに、腸内細菌医療を~

腸内細菌研究に基づいた医療・創薬を推進するメタジェンセラピューティクス株式会社(本社:山形県鶴岡市、代表取締役社長CEO:中原拓)は、国内初となる献便施設「腸内細菌ドネーションサイト 鶴岡(仮称)」を、山形県鶴岡市の「鶴岡サイエンスパーク」内に開設することを決定いたしました。同施設のオープンは、2025年4月を予定しています。

“通いたくなるトイレ”をコンセプトとした献便施設の完成イメージ

■通いたくなるトイレで「献便」。使う人に寄り添うデザインへのこだわり
本施設は、鶴岡市を含む庄内地区の住民を対象とした、“通いたくなるトイレ“をコンセプトとした献便(便の提供)のための施設です。便の提供者となる「腸内細菌ドナー」の皆さんに定期的に献便を行っていただけるよう、心地良さを追求したトイレや施設の設計を目指しています。

本施設の設計においては、フィンランドの建築家アルヴァ・アアルトの「パイミオのサナトリウム」の設計思想に着想を得ています。月山を望む大きな窓から光をたくさん取り込み、ゾーニングやカラーによってドナーに心地よさと安心感をもたらす動線と空間を目指しました。腸内細菌ドナーは、日常的にこの施設を訪れ、献便用に開発された専用トイレで便の提供を行います。提供された便は専用ボックスで隣室の設備に運ばれ、便から腸内細菌が抽出されます。

■2025年4月オープンに向け、腸内細菌ドナー候補者募集
メタジェンセラピューティクスでは、2025年4月のオープンに向け、今後、鶴岡市を中心とした庄内地区におけるドナー候補者募集や、近隣の医療機関との連携に力を入れてまいります。「腸内細菌ドナー候補者」として登録を希望される方は、J-Kinsoバンクのウェブサイト(https://www.j-kinso-bank.com)にて、ウェブ問診に回答いただき、安全性基準を満たした方のみが候補者として登録されます。

ドナー候補者のうち、献便施設近隣の医療機関での適格性検査を通過した方のみ、「腸内細菌ドナー」として、同施設での「献便」が可能となります。なお、腸内細菌ドナーには、献便1回あたり数千円の献便協力費をお支払いします。

■「腸内細菌」を医療に活用
近年の研究により、腸内細菌叢の乱れは、がん、潰瘍性大腸炎、パーキンソン病など、さまざまな疾患と関連することが明らかになっています*1。研究の進展とともに、世界では腸内細菌を「医療」において活用する動きが広がり、米国やオーストラリアでは腸内細菌による医薬品が承認されています。

日本では現在、潰瘍性大腸炎を対象とした「腸内細菌叢移植」が先進医療Bとして実施されています。また弊社の腸内細菌を用いた潰瘍性大腸炎治療薬の開発事業は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の令和6年度 「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」に採択されています。今後日本において、腸内細菌を用いた医療技術や医薬品の開発を推進し、日本や世界の患者さんに腸内細菌医療を届けるためには、便を提供する「腸内細菌ドナー」の協力が不可欠です。

本献便施設で抽出された腸内細菌は、主に腸内細菌を用いた医薬品の原材料として利用され、一部は「腸内細菌叢移植」に用いられる腸内細菌叢溶液の原材料としても利用される予定です。なお、高い安全性を確保するため、腸内細菌の抽出は、徹底した製造管理および品質管理のもと、同施設内の設備にて行われます。

鶴岡での献便施設の開設について、メタジェンセラピューティクス CEO 中原拓は、以下のように述べています。

「鶴岡の皆さん、はじめまして!国内初となる献便施設を鶴岡市に開設できることを、大変嬉しく思います。鶴岡市は、日本で初めてユネスコの食文化創造都市に認定された食の都です。また、日本の科学技術イノベーションの拠点の一つでもある『鶴岡サイエンスパーク』を有し、現在実施されている地域住民を対象とした健康調査には鶴岡市在住・在勤者1万人以上が参加するなど、科学や健康に関心の高い都市でもあります。私個人にとっても鶴岡との出会いが腸内細菌の力で患者さんを救うことを目指すベンチャーの起業につながっており、鶴岡は大変重要な意味を持つ土地です。鶴岡の皆さんと世界の患者さんを救うモデルを作っていきたい!そんな思いで、鶴岡での開設を決めました。

腸内細菌ドナーとして献便を行っていただくにあたっては、正式にドナーになった後も食事、運動、睡眠を含む健康な生活習慣の維持が重要です。鶴岡では海や山の幸、米、果物など多様な地域食材を、季節ごとに楽しむ文化が根付いており、訪れるたびに感激しています。鶴岡の豊かな食文化が育んだ多様性に満ちた腸内細菌叢が患者さんを救う未来につながるよう、鶴岡の皆さんのご協力をいただきながら、一方で科学・医療の面では一切妥協せず、着実に歩を進めていきたいと思っています。

『腸内細菌ドネーションサイト 鶴岡(仮称)』は、メタジェンセラピューティクスと腸内細菌ドナーのためだけの施設ではありません。その周りにいる地域の方々や県内外の多くの企業の皆さんにご協力をいただきながら、新たなエコシステムの中心地として鶴岡に貢献し、将来このモデルを全国に展開することを計画しています。私は北海道の東川町という旭岳の麓にある水とお米の美味しい町に住んでいます。出羽三山に囲まれ、お米の美味しい鶴岡のような町に住む価値を自分の感覚で理解しています。こうした豊かな食生活をもつ日本の地方が世界の患者さんを救うモデルを、鶴岡の皆さんのお力を貸していただいて確立させて下さい。どうぞよろしくお願いいたします」

なお、本施設内のクリエイティブディレクションは株式電通と合同会社SOUDA TOKYO が共同で行います。

・佐々木 瞭(株式会社電通)

「便の提供を通じて世の中に健康をひろげていく「献便」という新しい営み。その普及のためには、献便施設がドナーの方々の生活に溶け込み、気軽に足を運べる場所になることが必要不可欠です。
鶴岡の方々に安心して快適に使っていただき、ここを拠点として新しいドネーション文化が育まれていくために、あるべき空間や体験の検討を、さまざまな領域の専門家とともに進めてきました。目指したのは、従来のトイレの常識にとらわれない、気兼ねなく滞在できるカフェのような空間です。
そして、献便施設がドナーの方にとって、清潔で安心に満ちた場所になることは、腸内細菌医療という画期的で新しい取り組みに対する患者の方の信頼を醸成することにもつながっていきます。
患者さんとドナーがつながり、さまざまな企業や団体との新たなパートナーシップが生まれるハブへ。
そうしたビジョンの実現のために、クリエイティブを起点とした連携と支援を今後も続けてまいります」

・繭山 俊(合同会社SOUDA TOKYO)

「今回この献便施設のあるべき姿を検討するにあたって、献便という取り組みを、鶴岡に暮らすドナーの方々の日常の中に気持ちよく取り入れていただくことがとても重要であると考えました。
プライバシーと居心地の良さを両立する新しいトイレ空間の設計や動線、インテリア、照明。献便を、ストレスのない日常体験にするための新しい便器の開発。
鶴岡の自然豊かな環境も取り込みながら、これら一つ一つの体験のデザインを通じて「通いたくなるトイレ」というコンセプトの実現を目指しました。
献便という先進的な文化の創造拠点が鶴岡にあることに、地元の方々が誇りを感じて頂けるよう、ふさわしい空間づくりにむけて引き続き尽力していきたいと思います」

施設概要

所在地 山形県鶴岡市覚岸寺字水上246番地2
延床面積 210平米
竣工予定時期 2025年3月(予定)
開設予定時期 2025年4月(予定)

腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)について
ヒトの腸管には約1,000種、40兆個以上*2腸内細菌が生息しており、その細菌の集団を腸内細菌叢(腸内フローラ)と言います。

腸内細菌叢移植(FMT)について
腸内細菌叢移植(FMT)は、健康な人の便に含まれている腸内細菌叢を、疾患を持つ患者さんの腸に移植し、バランスのとれた腸内細菌叢を再構築する治療方法です。2023年1月より、潰瘍性大腸炎を対象とした「抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法」が先進医療Bとして開始されました。メタジェンセラピューティクスは同先進医療の共同研究機関として、便ドナーのリクルーティング、便検体の管理、腸内細菌叢溶液の調製、品質管理などに係る支援業務を提供しています。
<参考リリース>
潰瘍性大腸炎を対象とした「抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法」が先進医療Bとして承認、2023年1月より実施
https://www.metagentx.com/news/230104_senshinb/

腸内細菌叢バンク「J-Kinsoバンク」について
「J-Kinsoバンク」は、腸内細菌を活用した医療技術や医薬品の開発を目的とした腸内細菌叢バンクです。メタジェンセラピューティクスでは、2024年4月より、ウェブサイト(https://www.j-kinso-bank.com)を通じた腸内細菌ドナー候補者の募集を行っています。なお、腸内細菌ドナーになるまでに、ウェブ問診をはじめとする多くの適格性検査をお受けいただく必要があります。すべての検査を通過し「腸内細菌ドナー」となる方は、ウェブ問診回答者のうち約10%*3と推定されています。

メタジェンセラピューティクス株式会社について
メタジェンセラピューティクス株式会社は「マイクロバイオームサイエンスで患者さんの願いを叶え続ける」ことをミッションとして、腸内細菌研究に基づいた医療と創薬でソーシャルインパクトを生み出す大学発ベンチャーです。
順天堂大学の医師と慶應義塾大学、東京工業大学の研究者が共同創業し、「腸内細菌叢移植(FMT)」の社会実装と、「FMT起点のリバーストランスレーショナル創薬」を推進しています。現在は、免疫疾患(炎症性腸疾患)、がん、中枢神経系疾患の開発に注力しています。現在メタジェンセラピューティクスでは人材採用を積極的に進めております。募集中のポジションはhttps://www.metagentx.com/careers/をご覧ください。募集中のポジションに当てはまるものがなくとも、マイクロバイオームサイエンスでイノベーションを起こす仲間に入っていただける方は hr@metagentx.com までご連絡ください。

<会社概要>
会社名:メタジェンセラピューティクス株式会社(略称 MGTx)
本社所在地:山形県鶴岡市覚岸寺字水上246-2
東京事務所:東京都港区虎ノ門1丁目17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー 15階
代表者:代表取締役社長CEO 中原拓
設立日:2020年1月17日
事業内容:マイクロバイオームサイエンスを活用した創薬·医療事業
URL:https://www.metagentx.com

【本施設での協業やパートナーシップに関するお問い合わせ先】
メタジェンセラピューティクス株式会社 献便施設開発担当
Email: contact@metagentx.com

【本プレスリリースに関するお問い合わせ先】
メタジェンセラピューティクス株式会社 広報担当
Email: pr@metagentx.com

出典:
1.Sorbara MT, Pamer EG. Microbiome-based therapeutics. Nat Rev Microbiol. 2022;20(6):365-380.
2.Sender, R., Fuchs, S. & Milo, R. Revised Estimates for the Number of Human and Bacteria Cells in the Body. PLoS Biol. 14, e1002533 (2016)
3.Bénard, M. V. et al. Challenges and costs of donor screening for fecal microbiota transplantations. PLoS One 17, e0276323 (2022)

【PDF】メタジェンセラピューティクス、国内初「献便施設」の開設を発表