理想の地「山形」から創薬の最先端に携わる MGTxだから実現できた憧れの働き方

MGTx STORYでは、メタジェンセラピューティクス株式会社(以下、MGTx)の各メンバーが、入社のきっかけや事業にかける思いを語ります。今回は、MGTxでCMC薬事や新施設の立ち上げなどに取り組む、黒田典敬のストーリーです。

黒田 典敬(くろだ・のりたか)
メタジェンセラピューティクス株式会社 研究開発部CMCユニット ユニットリーダー

<経歴>
鳥取大学農学部卒業。海外留学を経て、国内の化学メーカーや製薬企業で開発や治験薬製造、海外でのプロジェクトリードに取り組む。2023年1月にMGTx入社。

憧れていた“田舎暮らし”を実現

私は大阪府出身で、子供の頃から都会の喧騒から離れた自然に囲まれた中での生活や農業への憧れがありました。そんな思いもあり、大学は鳥取大学農学部に進学。学部生時代はバイオ系のコースを選択して、生化学や微生物学を学びました。大学卒業後はオーストラリアへの留学を経て、農薬を扱う化学メーカーや製薬会社で医薬品の研究開発に従事しました。その後は海外経験を活かし、当時の創薬の最先端だった再生医療を手掛けるバイオベンチャー企業での海外駐在や、米国からの医薬品ライセンス導入に関する技術移転のプロジェクトなどをリードしました。

バイオベンチャーで大きなプロジェクトを終えた後、昔から憧れていた田舎暮らしを実現させるため、地方移住を決意します。働きながら1年ほど日本の各所に赴き、田舎暮らしと仕事が両立できる最適な移住先を探していました。そこで見つけたのが山形です。広い平野部から眺める冠雪の朝日連峰や月山の美しさ、県内あちこちに湧き出る名湯・秘湯、おいしい果物やラーメンなどに魅了され、山形の製薬企業への転職を機に移住を決意しました。移住後は社宅で生活しながら、本格的な移住に向けて県内各地を視察していたところ、とある面倒見の良い農家さんと仲良くなったことがきっかけで、農家さんの近くにあった畑付きの空き家に移住しました。地方移住が実現し、前職の製薬企業で勤務していたときにMGTxと出会います。

山形で農作業をしながら創薬の最先端に携わる

日本では初めてとなる腸内細菌叢移植(FMT)の治療薬のCMC開発という、医薬品の「製品化」を担うポジションをオファーいただいたとき、これまで医薬品開発を経験してきた私にとっては非常にやりがいのある魅力的な仕事に思いましたが、その一方で一定以上の職務の多さや責任の重さが予想され、これを担うことができるだろうかという不安が同時に沸き起こりました。

また、スタートアップ企業での勤務は激務ではないかと不安に思う部分もあり入社を躊躇していました。しかし、MGTxは「山形で田舎暮らしをしながら働く」という私のライフスタイルを尊重してくれただけでなく、「週休3日」という農作業などのプライベートの時間との両立ができる働き方も受け入れてくれたため、安心して入社することができました(現在は週休2日勤務)。

入社後はFMTというユニークで画期的な治療薬の開発に従事することができ、国内外の専門家やPMDAなどの規制当局とコミュニケーションするなど刺激的でチャレンジングな仕事をしながらも、玄関の扉を開ければ、そこには田園風景が広がっており、車を10分も走らせれば天然温泉に入れるという、このオンとオフのギャップはMGTxだからこそ実現できるライフスタイルだと思っています。

MGTx創業の地でもある山形県のいいところは、東京まで飛行機で1時間、新幹線でも山形駅まで2時間半ほどで移動できる点です。東京-大阪間とさほど変わらない移動時間であるため東京で会議があったとしてもすぐに出張でき、そこまで不便さを感じない点も山形移住してよかった思える点です。

スタートアップビジネスとしてのFMTの魅力

MGTxへの入社の決め手は、理想の働き方が実現できるだけでなく、MGTxが取り組んでいる「腸内細菌叢移植(FMT)」の社会実装、そしてFMTを起点とした創薬がスタートアップとして取り組むに相応しく、実現の可能性が高いビジネスモデルであると感じたことも、大きな理由のひとつです。

腸内細菌叢移植(FMT)の有効性はすでに臨床研究で確認されています。米国ではすでに©Openbiomeが70,000例のFMTを達成しており、日本でも順天堂大学で200例以上のFMTが実施されています。通常の創薬では、動物試験などでの基礎研究の成果をもとに、人での臨床効果を確認しますが、期待する効果を発揮しないシーズも数多くあり、開発失敗のリスクが伴います。MGTxが挑戦するFMT治療薬は、臨床研究であらかじめ安全性・有効性を確認してから開発をスタートしているため、開発の成功確率が高いと考えます。創薬においてこれほどのアドバンテージはありません。一方でFMT療法を治療薬として提供するためには高品質な製剤を提供する必要があり、ここがチャレンジのポイントとなりますが、細胞製品やバイオ医薬品と異なり、FMT治療薬は試作製造のコストを低く抑えることができ、開発にかかる費用も少なくて済むことから、スタートアップ企業が取り組むのに相応しいターゲットだと思いました。

さらに、「便」という医薬品としてはニッチな素材を扱うこともスタートアップらしくて良いと感じました。そして日本におけるFMT研究の第一人者である石川、世界トップクラスの腸内細菌の研究者である福田山田という専門家が創業者であるということも会社の強みであると感じます。

日本初をカタチにする楽しさ

現在は研究開発部CMCユニットのリーダーとして、製剤開発、CMC薬事開発、品質管理方法の開発に携わっています。また、日本国内における新たな製造施設の立ち上げにも注力しています。これまでには関わったことのないような、様々な専門家と協力しながら青写真に描いていたものを形にしていくことがとても楽しいです。責任も大きいですが、それと同じくらいやりがいを感じています。

MGTxのアイデアを形にするスピード感や、一般的な企業であれば尻込みしてしまうような大きなチャレンジに対しても、失敗を恐れずに果敢に飛び込む精神は、スタートアップだからこそできる大きな強みであります。また社員同士がそれぞれの個性を大切にしていることから仲が良く、だからこそ率直な意見交換ができ、軌道修正が早いのもMGTxの長所かと思います。

最後に働き方の話に戻りますが、地方に住むことで、都会にいては気づかなかったであろう独自の視点やアイデアを持つことができ、それがビジネスやプロジェクトを大きく前進させる可能性につながります。これからもMGTxで働きながら、地方と都市をつなぐ架け橋となって、地域社会の活性化や地域間格差の解消にも貢献することができればと考えております。