My Journey to MGTx – Dai Ishikawa MD, Ph.D.

潰瘍大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)は、患者さんの日常生活だけではなく、学業や仕事などの社会生活に大きな影響を与えます。私は、医師として日々患者さんと向き合う中で、患者さんが抱える課題や、治療の課題に直面してきました。

消化器内科医として日々の診療に励んでいた30代の頃、私には助けることのできなかった同年代の患者さんがいました。その現実を目の当たりにし、患者さんの願いを叶えることができるような治療を自分の手で見つけ、患者さんに届けたい、そう強く思うようになりました。そして私は、腸内細菌叢移植(FMT)の研究への道を歩みはじめました。

日本で研究を始めるまでの道のりも、決して平坦なものではありませんでした。

患者さんへの想いを胸に、IBDの研究に本腰をいれるべく大学院に進学し、米国に留学して結果的に2年半、研究にはげみ論文を完成させました。そこで、“IBDを腸内細菌によって治療ができないか”という発想に行き着きます。

日本で臨床研究を開始するにあたり、便から腸内細菌を抽出し移植するという、これまでにないまったく新しい治療法の研究に対して理解を得られないこともありました。それでも諦めずに周囲を説得し、2014年、日本の患者さんにFMTを届けるための臨床研究を開始することになりました。

そうして、”たった一人の熱狂”で始めたFMTの研究に少しずつ仲間が集まるようになり、福田と山田から講演の依頼を受けたことをきっかけに転換期を迎えます。2人はその当時、腸内細菌叢を活用したヘルスケアを目指す株式会社メタジェンを創業したところで、私がこれまで行ってきたIBD研究にとても関心を寄せてくれました。このことがきっかけで、研究成果をより広く社会に還元すべくともに歩みだしました。

しかし、ヘルスケア事業を柱とする会社で、FMTを活用する医療の領域に介入していくとなると高い壁が立ちはだかっていました。そんな頃に、FMTの医療・創薬の事業化を構想する中原と出会い、福田、山田を含めた4人でMGTxの設立に至ります。MGTxの立ち上げは、私自身ずっと感じていた、“研究を研究として終わらせたくない”という想いをまさに体現できるものでした。

創業にあたりまず取り決めたことは、“FMTで人を救う”ということです。企業としていかに規模や事業が拡大しても、MGTxのCheif Medical Officer(CMO)として、これだけは何があっても守り続けていきたいと思っています。FMTを必ず社会実装し、より多くの患者さんに治療を届け、『患者さんの願いを叶え続ける』。これがMGTxのミッションであり、この想いを共有する仲間がMGTxに集まってくれています。

医師としての役目と、MGTxのCMOとしての役目は一直線上にあり、どちらも「いかにして患者さんを救うか」という目的を達成するために尽力しています。医師として目の前の患者を救い、そしてMGTxでの事業化によって、自分が直接診療していない患者さんにも治療を届けることができる。一人の医師としてよりもMGTxとしての活動が組み合わさることで、相乗効果が生まれ、より多くの患者さんを救える可能性が広がっていると感じます。どちらも私にとっては欠けてはいけない、重要な役割です。

FMTで人を救うという、シンプルでありながら難しく、社会にインパクトをもたらす意義深いこの目標を、これからもMGTxの仲間とともに貫き続けてまいります。

メタジェンセラピューティクス株式会社
取締役CMO
石川 大