臨床開発に“新しい価値”を 東京と長野の2拠点生活でFMTの社会実装を目指す

MGTx STORYでは、メタジェンセラピューティクス株式会社(以下、MGTx)の各メンバーが、入社のきっかけや事業にかける思いを語ります。今回は、MGTxで腸内細菌叢移植(FMT)の臨床開発に取り組む、寺本秀之のストーリーです。

寺本 秀之(てらもと・ひでゆき)
メタジェンセラピューティクス株式会社 臨床開発部ユニットリーダー

<経歴>
東京理科大学大学院 理工学研究科応用生物科学科専攻修士課程修了。グロービス経営大学院経営学専攻修了。国内大手製薬企業で非臨床開発、臨床開発、R&Dのプロジェクトマネジメントおよびメディカルアフェアーズに携わり、独立。フリーランスでスタートアップ企業の支援を行ったのち、2023年5月にMGTx入社。

研究を社会実装したい

わたしが学生のころ、サイエンスのトレンドのひとつにバイオテクノロジーがありました。生き物が好きだったこと、遺伝子や細胞分化など細胞のメカニズムに興味があったことから、その道に進みました。大学院では動物細胞の分化に関わる遺伝子を探索する研究を行い、のちに現在の再生医療にも結び付く発生生物学の分野に携わりました。

その後、何かのメカニズムを探索・解明するより、「基礎研究を社会実装できる仕事がしたい」という思いから、製薬企業で開発職というポジションでキャリアをスタートしました。そこでは乾癬や難治性の重症ぜんそく、パーキンソン病といった、免疫・中枢神経系の医薬品の開発や臨床研究に関わりました。業務内容としては開発研究のコーディネートや臨床開発のマネジメントなど、一貫してプロジェクトマネジメントに従事しました。最終的に20年以上勤続し、ビジネススクールにも通うなど、いかに体系的にマネジメントスキルを身につけていくかをずっと探求していたように思います

アカデミア発のスタートアップへの想い

製薬企業でのキャリアの最後に、臨床の現場で医師の先生たちとどのように研究を進めていくかといった、メディカルアフェアーズの部門に携わっていました。製薬企業では、ポートフォリオの中から選択しなかったものは開発対象から外してしまうのが普通です。しかし、その“あぶれてしまったもの”でも、それまで基礎研究を進めてきた研究者の存在があるわけです。先生たちと関わるなかで、そのような研究に長年打ち込んできた研究者の思いを汲むような活動、アカデミア発のスタートアップ企業の事業を社会実装する支援をしていきたいという想いがだんだんと大きくなりました。

その想いとともに、ビジネススクールを卒業した同年に前職を早期退職。アカデミア発の創薬スタートアップの支援をする機会をいただき、複数社の事業をお手伝いしていました。なかでも医薬品開発において臨床の段階からスタートしているMGTxの存在は、自身のキャリアともマッチしており、とても際立っていました。入社前にはじめて実地で参加した全メンバーが参加する合宿で、社長の中原を筆頭として、みんなが情熱を持ちひとつの目標に向かっている様に圧倒されました。また、私がこれまで創薬に携わった疾患の分野と一致する部分があり、自分の専門性が活かせると感じ、入社を決めました。

東京と長野県東御市を拠点に臨床開発をリード

現在はMGTxで臨床開発部ユニットリーダーとして、腸内細菌叢移植(FMT)の臨床研究のコーディネートや戦略立案などを行っています。普段はオンラインや順天堂大学での業務ですが、じつはワイナリー経営にも興味があり、東京と長野の2拠点から働いています。

熟す前のワイン用のぶどう

前職を退職したタイミングで、元々ワインが好きだったこと、日本のワインや自然派ワインに興味があり、また脱サラしてぶどう栽培やワイナリーを始める人が多いという事実を知ったことから、長野県東御市でぶどう栽培、醸造、ワイナリー経営のためのスクールに通っていました。フリーランスになったことを機に、両立して私もワイナリーへの道を模索することにしました。北海道で1年間農業の修行をするなど精力的に活動したのち、長野県東御市に戻り、ワイン用のぶどうの苗木や野菜、お米などを育て始めました。同時に、住んでいる地域コミュニティーが設立した民泊施設の管理も任され、休日は民泊のお客様に朝ごはんをつくるなど、地域とのつながりも大切にしています。

長野での稲刈りの様子

現在も、仕事の状況や季節によって東京と長野を行き来し、柔軟に働くことができています。MGTxでは、会社員一本のときとは全く違う、従来のひとつの形にこだわらない働き方ができると思います。今後も東京と長野の2拠点生活は続けていくつもりです。

少数精鋭の“スタートアップの醍醐味”

MGTxは、年齢層も専門性もバラバラのメンバーが集まっている会社ですが、それぞれがモチベーションを高く持ち、FMTの社会実装という目標に向かって突き進んでいることが、MGTxの強みだと感じます。

スタートアップなので、限られた人員で幅広い業務をこなしていく必要がありますが、一人ひとりが自分の業務外のことにも目を向け、いろいろな視点を持つことができているのがMGTxだと思います。だからこそ社内の風通しもよく、社長が言っていることを社員が理解できるのだと感じます。そうした少数精鋭で大きな目標の実現に向かっていくということは、大企業では味わえないスタートアップの醍醐味です。

また、オンラインで業務をしているにもかかわらず意思疎通が取りやすく、話がまとまるのが早いというのは、これまで関わってきたスタートアップと比べても特徴的です。議論が白熱することはありますが、相手の意見をきちんと取り入れ、会社の結論としてどこかに落とし込まれるといったことができているのは、きっとみんなが同じ方向を向いているからだと思います。この一致団結さはこれまでの会社では見たことがありません。

既存の医薬品にない“新しい価値”を

通常、医薬品開発にはとても時間がかかるため、これまでのキャリアのなかでは、最短に効率よくやる方法を考えてきました。それに比べて、FMTは臨床研究であらかじめ安全性・有効性を確かめてから開発をスタートしているため、既存の医薬品のビジネルモデルに当てはめるのではなく、これまでになかった新しい開発戦略を打ち出せる可能性を秘めていると感じます。今後はそのような“新しい価値”の創造に焦点を置き、臨床開発に取り組んでいきたいです。

ぶどう畑での食事

また、長野県東御市を拠点に取り組んでいるワイナリー設立の準備や民泊も、ライフワークとして長く続けていきたいです。MGTxで創薬の業界をも変えうる新しい挑戦をしながら、こうして好きなことにも熱中できているので、日々充実しています。今後も邁進していきたいと思います。